あの場所とはあたしたちの家の近くにある広い草原。

ここはよく地元の小学生が草野球をやってたりサッカーをやってたりして、あたしと颯汰も小さい頃よく一緒にサッカーをしてたんだった。




「ハァハァ」

息を切らしていると颯汰はあたしを見て笑った。

「お前疲れすぎ」

「仕方ないじゃん!」

「体鍛えろよ」

「むっ」


そうだよね。
最近サッカーをやってなかった。
見ることなら毎日してるけど、結局忙しくて時間がなかったのかも。


「1対1な。」


「うん!」

久しぶりに颯汰とサッカーするなぁ。
なんて思ったら急にやる気が出てきた。


颯汰に勝ってやる!
なんて心の中で意気込むあたし。


「あっ!」

とふいに空に指を刺した颯汰に何事かと指差す方に顔を向けるとそこには何もなく、
「うっそー」
と颯汰は言い、あたしがよそ見をしてた隙を狙ってボールを奪い取った。

「こ、こらああ!」


あたしは颯汰を慌てて追いかけ、足元にある自由自在に操られてるボールに向かってスライディング。

足に泥がついたって汚れたって構わない。

サッカーは楽しむことが大事なんだから!


ボールを奪い取ったあたしはそのまま走りだす。


古いサッカーゴールネットが設置されていてそこにシュートを決めれば勝ち。


だからあたしは後ろから颯汰がボールを奪い取るチャンスを伺っているのを知りながらも走ってそのゴールにむけて走る。

もう無我夢中で。


「結衣、足だけは速ぇな!」

そう言って颯汰は足をだしボールを奪い取ろうとする。

あたしは昔お父さんに教えてもらったコツを思い出して、颯汰の足を簡単にかわす。


「へへっそう簡単に負けないもんね」

あたしは余裕の笑みを見せて大きく足を振りかぶりそのままサッカーゴールに向けてシュート!


くるくる回転しながらあたしの蹴ったボールはゴールに入った。


「やったぁ!」


大声で叫んであたしはガッツポーズ!
そんなあたしを参ったという表情で颯汰は笑った。


「結衣、お前変わらねーな」

「え?」

「サッカー終わったあとのその顔」

そう言って颯汰はあたしの頭にポンと掌を置く。
そして優しく撫でる颯汰を見上げて見ると夕日に照らされた颯汰が不覚にもカッコよく見えた気がした。