「ねえ、ごめん」

「違うよ」

「何が?」

「そんなことで乗らないんじゃないよ」

「じゃあ、なんで?」


僕が止まると、こいつも止まった。街路樹が夕日の照明を調節してこいつへと降り当てる。ああ、チャラけた、調子こいた格好。でも、似合ってる。

年相応の、女の子の格好。


「僕を乗せて走るの、キツイでしょ」

「……」

「当たり前だよ、背も伸びたし、体重だって増えてる」

「……」

「成長期じゃん、ぶっちゃけ。お互い、体が違くなってく」

「ねえ」

「おかしいじゃん。男が女の自転車の荷物になってる、なんて」

「ねえ!」


またこいつは喚く。うるさい。なのに、僕の心がそれで震える。聞いていたくない、声。聞くと涙が止まらなそうで。


「あたしは、そんなのどうだっていいよ!幼馴染だから、近所だから、体格差がなかったから迎えに行ったんじゃない……」