「なんで!」
「なんでも!」
「待てよ!」
「待たない!」
まだここは学校なんだから、みんながこっちを見る。見るな。でも、関係ない。僕は歩いて帰る。さっきそう決めた。
もう、荷物にはならない。バカにもされない。僕になる。人間になる。
嬉しい、はずなのに。
「なんで、泣きながら歩くの?」
横を見ると、自転車に乗ったあいつが髪をなびかせて僕に速度を合わせている。歩くより自転車の方が速い。当たり前だ。
「泣いてなんかないよ」
「ごめん」
「なんで謝るの?」
「ちょっと自分、ガキっぽかったなって」
くそ。くそ。なんでそんなこと言うんだ。それじゃあ僕がガキみたい。なんにもわかってないみたい。違うもん。僕はわかってるから、歩いて帰ることにしたんだもん。