「早く、乗れよ」


わあ。待ち伏せ。こいつは頼みもしないのに登下校の送迎を買って出る。嫌そうな顔してわざわざ。意味わかんない。

僕、重くなった。恥ずかしくって、こいつの背中にも手を回せない。だから僕を自転車に乗っけて走るのは、すごく疲れることだ。なのに、なんでいつも扉を開けると、こいつはそこにいるのだろう?
ターニングポイント。分岐点。

僕は、自転車を避けて校門に向かって歩いた。


「おい、何してんの?」


あいつが喚く。うるさい。僕は顔だけ振り向く。歩いたまんまで。


「歩いて、帰る!」


あいつが遠ざかる。当たり前だ。僕は歩いているんだから。だけど、それだけじゃなくて、いろんな意味であいつが遠ざかる。