さー、と風が自転車から真っ二つに裂けて僕の横を通り過ぎる。等間隔に植えてある街路樹の現れては消えてを繰り返す様子が一つの映画みたい。それは僕の視界だけの話だけど。

風の音がする。ゴオオ、って。ちょっと音響さん、映画なら映画らしく雑音は除けなさいよ。僕だけが観る映画にそんな手間はかけられないか。

お尻痛くなってきた、と思った頃学校に着く。上映終了。僕は人間に戻る。

そのまま歩き出すと背中に怒鳴りつけられた。


「おい、乗せてやったのに待ってもくれないのかよ」


あいつが不満そうに頬を膨らませていた。