どれぐらいの時間を保健室で過ごしたんだろうか。
さっきまで赤く色付いていた景色はいつの間にか薄暗くなっていた。
「帰るか………。」
ゆっくりと、鞄を持って下駄箱を出た。
グランドには部活をやっている生徒がいて。
ゆっくりと、足を進めて家へと帰っていく。
すると、ふっと見上げた視線の先にある人が映る。
「…………夕希………。」
さっきまで千里と居たはずの夕希が正門のところでただ1人で居た。
「…………紘紀。来るの、遅い。」
コツコツとローファーの底を鳴らせて歩く夕希の姿に、胸が高鳴る。
最近の夕希は2人にならない限り、絶対に表情を変えない。
だから、最近の夕希は大人びているんだ。
前までは、あんなに幼い子供のようにクルクルと表情を変えていたのに。
それでも、俺はそんな夕希も好きなんだ。
だから、こんなにも夕希を目の前にすると心臓が煩くなる。