「っっ!!」
少しだけ悲鳴にも似た紘紀の声が聞こえた。
「紘紀??」
そっと後ろから紘紀の顔を覗きこんだ。
すると……………。
「…………夕希………。」
紘紀は身体をくるっと反転させてあたしを抱き締めてきた。
「紘紀!?」
いきなりの事にパニックになってジタバタと抵抗する。
「ゴメン、今だけ。」
その切ない声を聞くまでは……………。
「紘紀??泣いてるの??」
「泣いてない、けどツラい。」
その声は震えていて…………。
何がそんなに紘紀をツラくさせてるのか分からないけど…………。
「紘紀??大丈夫だよ??」
あたしはそっと紘紀の背中に腕をまわした。
「…………夕希っ…………。」
その瞬間……………。
ドサッ
「えっ………。」
いつの間にか、あたしは床に押し倒されていた。
「…………夕希…………。」
紘紀はあたしの名前を呼んだ。
「…………こ………うき??………ヤダよ…………離してっ………。」
あたしは紘紀の下で無駄だと分かっていても抵抗をした。
「っっ………夕希はっ………俺のことが嫌いか??」
紘紀は、あたしの頬にそっと手を添えると切なそうに聞いてきた。
「………紘紀??」
「俺は、ずっと夕希を見てたんだ………。」
紘紀はあたしの首元に顔を埋めた。
「なぁ…………なんで俺じゃなくて榊原なんだよっ…………。」
「紘紀っ…………なんでっ…………。」
「夕希、榊原のことは今でも好きなのか??」
その表情は見えない。