✰紘紀side✰
俺は夕希の居なくなった部屋で一つ溜め息を吐く。
「フゥー…………危なかったな…………。」
少しだけ夕希の香りがする部屋に顔を歪めた。
「俺はずっと……………夕希を好きなんだよ…………。」
口から情けない声が零れ落ちる。
一目惚れにほとんど近いようなものだった。
入試の時に隣の席でたまたま俺がシャーペンが壊れてしまった時に、さりげなくシャーペンを貸してくれたんだ。
バレてしまうことの危機感からくる高鳴りなのか、その優しさに救われた安心感からの高鳴りなのか…………それとも………。
その時はただ必死にテストを終わらせた。
それから、テストの終了チャイムと同時に俺はすぐに隣の子の顔を見た。
「あのっ!!」
隣の子は片付けをしていて、俺の声に気が付いていなかった。
「ちょっと!!」
少しだけ腕を掴んで振り向かせた。
その時に掴んだ腕の細さに俺は腕を離しそうになった。
「えっ…………。」
隣の子…………それは今よりも少しだけ幼い顔つきをした夕希だった。
「っっ\\\\\」
あまりの可愛さに体中の7熱が一気に上昇していく。
「どうしたんですか??」
夕希は少し不安そうな表情で見てきて、それが更に俺の顔を赤くさせた。
「シャーペン…………ありがとうっ………。」
もっと愛想良くすればよかった。
言った後に後悔が押し寄せてくる。
しかし、無愛想な言い方にも関わらず夕希はニコッと微笑むと…………。
「そのシャーペンあげます。明日もあるし、壊れたシャーペン直すより疲れを癒した方が良いでしょ??」
そう言って、颯爽と帰って行った。
俺はその瞬間に夕希を好きになった。