「紘紀の好きな人は可愛い子なの??」
「あぁ、めちゃくちゃ。」
2人の話し声が静かな廊下に響く。
「どうして好きになったの??」
「それは、今日は秘密。」
そう言って、人差し指を口元に運ぶ。
その仕草はとても絵になる…………。
「紘紀、モテるのに何でだろうね………。」
「俺はモテないよ??」
「モテるじゃん!!」
「俺は好きな子以外にモテたくなんかないよ。」
「紘紀って一途なんだね。」
「そうか??そう想うのが普通なんじゃね??」
「…………紘紀に想われてる子は幸せだね。」
「なんで??」
「だって、こんなに大切に自分を想ってくれる人なんて居ないでしょ。」
「さぁ??俺の素直な気持ちだし。」
すると、紘紀は何を思ったのか突然あたしの腕を掴むと………。
「よしっ!!!!遊びに行くぞっ!!!!」
「今からっ!?」
「いま行かなくていつ行くんだよ。」
子供のように口を尖らせながら聞いてくる。
「プッ、可愛い~!!!!」
「なんだとぉ~!?」
「アハハ、そうだね。遊びに行こうか。」
「おっ!!元気になったな!!」
「えっ??」
「夕希は笑ってる方が可愛いよ。」
「!!!!」
「アハッ、顔が真っ赤だぞっ!!」
「なっ!?」
「ではっ!!Let'go!!」
その掛け声と共に紘紀はあたしの手を握った。
「紘紀っ!?ちょっと待ってよっ!!」
「夕希は遅せぇな~。」
「紘紀が早いんでしょ!?」
そんな他愛もない言い合いをしながらあたしと紘紀は学校を出た。
この時、気が付かなかったんだ…………。
紘紀はワザと手を繋いだり、あたしを笑わせていたことを…………。
何故なら…………この状況をあの人は見ていたから。
紘紀はあの人が見ていることを分かっていたから…………。