すると……………。
「コイツの隣は俺が座るから。」
その声に身体が揺れる。
実紗や龍雅くん、たくさんの男の子たちが目を見開いている。
振り返らなくてもこの声が誰なのか分かる。
愛しくて、いつもあたしを切ない気持にさせた人。
実紗があたしの後ろの人に声をかける。
「ちょっと!?なに勝手なこと言ってんのよ!?」
「実紗っ!!!!」
龍雅くんが今にも飛び掛かっていきそうな実紗を必死に止めている。
「夕希の隣は俺だけだ。」
「…………勝手なこと言わないでよ。」
どうして??
どうして今頃そんなこと言うの??
そんなにあたしの泣きそうな顔を見て、苦しんでる顔を見て楽しいの??
「実紗、あたしはこの人の隣に座る。」
そう言って、近くに居た優しそうな男の子の腕を引っ張った。
「俺が滝澤さんの隣にっ!?」
その子は顔を赤くさせて驚いている。
「うん、あたしの隣に座ってくれる??」
あたしがニコッと笑いかけると、その男の子も笑いかけてくれた。
「夕希、俺は夕希の隣しか座らねぇよ。」
あの人の声が後ろから聞こえてくる。
「俺の隣は夕希しか認めない。」
凛とした真っ直ぐな声が響く。
さっきまで騒がしかった教室が物音一つしない空間に変わった。