「貴弥。どこ行くの?」


くいくい、と貴弥の袖を引っ張って尋ねる。


「あ?とりあえず飯。店で待ってるし」


待ってる?


何が?…あ、違う。誰が、だ。


まさか………


新しい彼女を紹介されて


『俺、こいつと付き合うから別れて』


とか言われちゃうとか⁉


うあーーーっ‼


嫌だっ‼


そんなの耐えられない…。


嫌な考えばかり浮かんでしまう。


「ぶっ…!おっまえ、百面相!」


ぶに、っと貴弥に頬をつねられた。


「いひゃいっ!」
「ほーんと、莉生ってわけわかんねぇよなぁ」


…わけわかんないのは貴弥のせいだ。


ぶっすーっとすると、また貴弥が笑う。


「ほら、着いたぞ」


そう言った貴弥が指差したのは、大通りから少し路地に入った場所にある、小さなアンティーク調の看板。