俺は驚いた。
もしかして、その人って…
「それは誰に対して?」
飛華流ちゃんは
間をあけて答えた。
『えっ?それは…土方さんです』
俺の中の何かが
ズタズタと崩れ落ちていくのが
分かった…。
僕は土方さんには
勝てないんだ…。
でも…
「それって緊張しているだけじゃない?まだ来たばっかりだし、慣れて来ると大丈夫だよっ」
僕は意地悪だから…
『……そぅですよねっ…』
飛華流ちゃんの
背中が悲しげに見える。
僕の気持ちを伝えたら
飛華流ちゃんはどんな顔を
するだろうか…。
昨日飛華流ちゃんは
確かに“男が嫌い”と言った。
土方さんの部屋から
泣きながら出てきた飛華流ちゃん。
その時、やっと気付いた。
僕は飛華流ちゃんが好きなんだって。
『沖田さん…?』
飛華流ちゃんに
呼ばれてハッとした。
「あっごめんね…じゃ行くね。」
僕は自分の部屋までの廊下を
歩いていた。
すると、前から土方さんが来た。
通り過ぎる時、
「僕、土方さんには負けませんから。」
と言った。
土方さんは一瞬驚いていた。
だが、次の言葉は衝撃的だった。
「ふっ、総司には負けねーよ。」
と言って、去ってしまった。
くそ…
僕はまた負けてしまうの?
薫と同じように
また土方さんにとられるの…?