幕末にゃんにゃん【完】





「姫時ちゃん……」




もう一度追かけようと目線を彼らに向けたが、刀を鞘にしまうと私を抱きしめた。




――――ギュッ




「…ごめんね。助けるのが遅くなって…怖かったね」




その言葉で、私はワンワンと泣き出した。




多分、安心したからだと思う




『そ、じ……ありが、どう……ヒック…』




「何言ってるのさ。全部受け止めてあげるから……今は泣いていいよ」




その後、私は総司の着物にシミができるくらい泣いた。








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「すまなかった」




屯所に帰ってから、縁側に座っていた私は一君に謝罪された。




何で一君が謝るんだろう……飛び出したのは私なのに…。




『一君何も悪くないじゃん。こっちこそゴメンね…いきなり飛び出して』




ニッコリと笑顔を浮かべながら頭を下げる一君の頭を撫でた。





「……ひ、めじ……」




「ほんと、なんでそこまで優しいのさ…。ココは斬首か切腹っていっときなよ」




『総司。なんて物騒なこと言ってるのよ』





この子怖すぎるは……。











私って、案外立ち直りが早いようで……。




一刻くらい過ぎた頃には、先ほどのことなど気にしなくなっていた。




多分、沢山泣いたからスッキリしたのかも!



そう考えながら、隣に立っている総司を見上げる




「なぁに?」




私の視線に気づいた総司は、私に顔を近づけながら首をかしげた。




ドキッッ!!!




ブンッと効果音がつきそうなくらい顔をそらした。




なんか、意識してしまって顔がまともに見れない。













そんな私に、一君は真剣な顔……っていってもいつもそうか…。




まぁいいや。真剣な顔をして私を見た











「姫時……話がある」








ザァッと庭にある木々が、こすれあって音を奏でた。











ところかわって、私の部屋。




私の目の前に一君、隣に総司…の席順で話を聞き始めた。




「この屯所には、昔女中として働いていた娘が居た。名前は咲月という」




一君は、ゆっくりとゆっくりと話し始める。




話によれば、



一君や総司とか藤堂さん原田さん永倉さんと幹部隊士の皆が彼女に心を開いていたそうだ




彼女の作る料理は絶品。気はきくし。何事にも前向きで笑顔のたえない子だったらしい。




「俺は咲月を好いていた。

そして、咲月も俺を好いてくれていて……お、俺たちは恋仲になった」




最後ドモリ過ぎです。

でも、一君は嬉しそうに言った。




その姿から好きだったのだと、すぐに分かる。










「そして恋仲になってから数日後に、あいつはこの屯所にやって来た」




あいつ=サタン飯塚




「初め咲月とあいつは仲がよいのだと思っていた。よく一緒に居るのをみていたしな」




でも、それは俺の思い違いだった。




一君の目に怒りが、あらわになる。




『……は、一君?』




「咲月ちゃんは君と同じ目にあったんだ……そして子供をはらんだ」




一君の代わりに総司が言った。



私は絶句した。



レイプされて子供ができたの?









「そして、咲月は何も言わず新撰組を去った。俺にすら、全て何も話さず」




一君は、顔を片手で隠しながら俯いた。




『……そっか』




「普段から影で色々と嫌がらせをしていたことが分かったのは、彼女がココを去ってからだった」




総司は、私の目を見ながら教えてくれた。




彼女を問い詰めるにせよ。当事者である咲月さんがいなければ、どうすることもできない




だから、飯塚さんは今も新撰組にいる。




咲月さんは怖かっただろう。あんな体験をしたのだから……。




思い出してブルッと体が震えた。




「君は咲月ちゃんによく似てる」




俯いていた私に総司の言葉が降りかかる。










『え?』




「何かあっても、何も言わない……君も咲月ちゃんも一人で決めて一人で行動する」




『そんなことないって』


「嘘吐き。今回だって君の単独行動で怖い目にあったんだよ?」




『そう、り?いらい』




頬をつねられて、涙目になりながら彼を見上げる。




「俺は席を外すべきだろうか」




「あれ?君まだそこにいたの?」




おいこら待て、シリアスなムードは一体何所に行った。










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咲月さんも私のように、何かが無くなって必死に探し回り挙句の果て



屯所を飛び出しボロボロの姿で帰ってきたということを話で聞いた




大切な物だったのだろう……。絶対に取り戻したいほど……。




廊下から見える星空を眺めながら心の中で呟く。




ちなみに、私の大切な文箱は、一君により無事私の手に生還した。




そして、今は闇が当たり一面をまとう夜




『はぁ……お風呂気持ちよかったァ♪』




着流しの着物を着て手ぬぐいで、頭を拭きながら廊下を歩いていた。