カランッ、、と戸の軽快な音がお客様のことを知らせてくれる。
「いらっしゃいませっ………」
営業スマイルで振り返りざまにがっちりと目があってしまったくそうっ!
ニヤリン、の店長と困惑というか少しやつれ気味の彼が入り口にたっている。
「裏口からはいってきてよ………」
もー、やだ。今ので疲れがどっと押し寄せた。
「あ、すいませーん。」
「はいはい、ただいまー。」
もー、いやっ!
忙しさにかまけて忘れてたのにっ!
注文を取りに行って、料理を運んで、料理をつくって、
なんか今日はいつもよりも働いた気がする………。
ランチタイムが終わり、常連客ばっかになっていたときぐったりと椅子にすわる。
「なに、麻由ちゃん。疲れきっちゃってー」
ケラケラと笑うな、おっさんよ。
「いや、おれまだ26だからね?まだおっさんじゃない年だよ?」
「いや、じゅーぶんおっさんだぁー」
いや、うるせーよ。馬鹿やろう。
「今日は倍働いて疲れてるんです。そっとしておいてください。」
ぷい、とキッチンにお茶をいれるために逃げる。その背に注文が投げかけられてくる。
うん、こき使われてるのよ。
「ねぇ、麻由ちゃん?」
常連客のはじめさん。24歳。休みにだからってティータイムに来るのはやめよー。年が近い分勘が鋭い。だから、小さな変化も見逃してはくれないのだ。
「新しく入ったあの子のこと、気にしてるでしょ?」
面白そうに問うてくるはじめさんに冷たい一瞥を投げかけて。
「紅茶に唐辛子とタバスコ入れて欲しいんですね。はい、承りました。」
タバスコと、唐辛子とついでに鷹の爪をとって臼鉢に入れようとするあたしに血相変えた顔で止める。んでついでに謝罪をされるので此方が本気だとわかったのだろう。
ふん、そーだよっ!
きにしまくりだよっ!!
しょーがないじゃんかぁっ!!!
自分で自分に言い訳して紅茶を注ぐ。
ほわほわと優しい湯気がたちこめて……
うん、上出来。