こてん、と首を傾けながら微笑んでやると真っ赤になった彼が口をぱくぱくさせながらあたしをみている。
うん、なんか可愛いねー……
「ねぇ、……いや?」
あたしに、キスされるの。
「なっ!………」
「やっぱり、まだすき、だいすき。」
舌っ足らず、なんか頭がくらくらしてくる。
さっきまであんなにはっきりしてたのに?
だけど、ね。
夢うつつで終わるならどうせ、言ってしまおう。
「ずっと、すきなの。優しいとこも、真面目なとこも。真剣なとこも。」
彼は目をまん丸くしてあたしをみている。
うん、あの時もこんな風にみてたっけ?
「だいすき、ふられてもやっぱり未練たらたらだよ。」
ねぇ、届いてる?
脇役でも少しくらいのぞんでいいよね?
「今、ね。ものすごいドキドキしてる……頭もくらくらするし、」
少しだけ、笑んで彼の服の裾を掴んで
「側にいてくれる……?」
叶わない、かはわからない。
けど、叶えばいいと思う。
叶ってほしいけど、ヒロインにはなれないからここでとまる。
もう一歩、と思うけどこれ以上はあたしじゃいけない。
いっちゃだめなの。
ーーー御伽噺は所詮、御伽噺なの。
だから、脇役は脇役よろしく立ち回らないと。
着飾って王子様に見初められるのがヒロイン。
あたしは脇役。
だけど、
少しの幸せくらい、望んでもいいでしょ?
「ぎゅってしてほしいな……」
「………っ!」
力強い腕の中にいるとわかったのは彼の香りがすぐ近くにあるとわかってから。
息するほど、苦しい。
けど、嬉しいーー
「だいすき、だいすきっ」
「……俺も、麻由が好きだ。」
精一杯腕に力を込めて抱きつく。
ねぇ、離さないで。離れないから。
温かくて、温かくて、
泣きたいくらい、幸せ。
ーーー幸せはすぐ近くにあったの。
2人して、笑いあって。
ずっと、傍にいよう?
だから、ね。
「ずっと、だいすきだよ?」
御伽噺のお姫様。
脇役はお姫様にはなれないけど、
彼の隣ではお姫様になれるのーーー
end