「!!おいっ!!」
思わず、病人に叫んでしまった。
いや、これは普通叫ぶ。だって、
「ふぇ?……あぁ、ごめんね、ちょっとそのままでいててー……」
背中越しに声をかけられてただコクコクと首を動かすしかなかった。
だって、あいつ……
おもむろに服に手をかけるから。
あー!!もうっ!!
仮にもあいつは病人だ。我慢しなければいけない。いや、いつも我慢しているのだが……!
「……ゴメンね、あたま、まわってなかった……」
舌っ足らずで着替えたのだろう、あいつが声をかけてきて振り返ると………
これまた、俺を試すつもりなのか……!
「……寒くないのか……?」
いや、俺の為にも上だけでも何か羽織って区れっ!!
麻由のしている格好は病人とはいいがたい、ざっくり胸の開いた薄手のトレーナーにショートのルームパンツ。
露出多すぎだろっ!!
「……いま、せんたく、してるから……。」
「何かないのか?」
「…たいじょうぶ、ヒーターつけたら暑くなるし、いま、そんなにさむくないの……」
笑って俺の隣に座る麻由。
おい、これは何の嫌がらせだ?
「とにかく、布団で寝ろよっ!」
「……ぃや……」
麻由は俺のセーターの裾を握ると少しだけ俺を見上げてこう言い放ったのだ。
「……いっしょ、がいい。」
「………っ!!!」
すりすり、と俺によってくると胸元に頬をくっつけて服は握ったまま俺の足の間に入り込んで足が触れる。
「ーーーーっ!!俺っ!お粥作るからそれまで布団で寝ろよ?」
握られたセーターから手を解いてベットの中に潜り込ませる。
掛け布団をかけて優しく頭を撫でてやると安心したように笑って目を閉じた。
「……ふぅ、」
あぁ、日付が変わるまであと六時間。
俺は耐えられるのか………。
とりあえず、簡単に作った卵粥をミニテーブルに置くと寝返りをうった麻由がこちらをみてとろけるような笑みを浮かべた。
「………っ!ほらっ!できたぞっ!!これ食べて薬飲んで寝ろよ?」
「……うん、」
起きあがろうとする麻由を手伝って、小皿に分けたお粥とレンゲを渡して俺も買ってきた晩御飯。いつもよりも少し早いけど。
「……ありがとね。」
まだ、舌っ足らずだけどしっかりとした目で俺をみながら麻由はそう言った。
お皿には空になった器。
お粥のことかと、思った俺はもういいのか?というと、麻由は違うのといった。
そして、まだ顔が赤いけど熱もあるのに笑って
「……ちょこっとだけ、寂しかったんだぁ……」
これは、素面なのか?
あの、とろんとした表情ではないけど。
まだ頬は赤いよな?