「……ふぇっ、……くしゅんっ!!」
「あらやだ、麻由子風邪じゃない。」
店長が箒を持ちながらくしゃみを連発しているあたしの額に手を当てて眉をひそめる。
店長、手冷たくて気持ちいいです……。
体はだるいし、
頭は重いし、
完全に風邪引いたなー、とか思いつつも熱も計らずにお店に来ちゃってちょっと後悔。
今は、たぶん3時過ぎくらい。
ティータイムの時間だけど、常連さんしかいないしこれから新しいお客さんがきてくださる可能性はあまりにも低い、と見積もる。
「麻由子、今日はもうあがりなさい。」
あたしよりも少し背の高い店長が優しくあたしの頭を撫でた。
うん、そうしよう。
万が一、常連さんに風邪がうつっても困るし。
「………お言葉に甘えてお先に失礼します。」
ぺこりと一礼してからエプロンを外してスタッフルールに入る。
そうして、お店からでて帰路についたのだ。
いつもの倍以上かけてやっとの思いで家の鍵を開けるとぐるぐる巻きにしたマフラーを脱ぐようにして外してコートと上のニットだけ脱いでベットに潜り込む。
あ、お米がない………
薬もちょうど切れてるんだった……。
なんて、買い物リストを頭に入れながらあたしの意識はフェードアウトしていった。
ふわふわ、
ちょっと暑いよ……
体が重くて動かないけど、いっか……。
「…ん、」
覚醒しつつある意識がうっすらと自分の部屋を瞳に映す。
次第に見えるようになってきたので、脱ぎ捨てたニットとコートとマフラーを持って玄関で身支度をしてから扉を体重をかけるようにして開けるとポスンッと誰かの胸元に頭をぶつけた。
「ふぁ、……すいません……」
「麻由、お前は馬鹿か……」
見知った呆れたような声が聞こえて顔を上げると買い物袋と紙袋を片手にあたしを呆れたような瞳でみていた。
むぅ、なによぅ………。
「とりあえず、店長がもってけって。」
「あー、ほんと?じゃあ、部屋あがって?」
彼のコートの裾を軽く引っ張って笑う。
やった、買い物いかなくてすむー……。
彼は深いため息をついてからふらつくあたしを支えながら玄関にはいって鍵を閉めた。
うん、施錠おっけー……。
支えられる、否抱きかかえられるようにしてベットに座らされてひんやりとした手が額に当てられる。
「……きもちい……」
目を閉じてそれを受け入れていると唐突に手を離されてむくれる。
「とりあえず、着替えろよ」
「ぁー、うんー……」
そうだ、まだ着替えてないんだー……