ニヤニヤしながら、そう聞く彩。
「あたしはいないよ~」
そんな彩に、あたしは苦笑いをしながら答える。
「前とかも?」
「…いないよ♪」
なるべく明るく答えた。
思い出したくないから。
なっ子にしか言ってない、あたしの過去。
彼氏なんていらない。
好きな人なんていらない。
あの日、そう誓ったから。
『次は○☆駅ー。Next……』
「あ、着くねっ」
短かったのか、長かったのか……やっと目的の駅に着いた。
「あっ!走るよ、実果ちゃん!」
「うんっ!」
あたしが走り出すと、後ろから待ってー!と言う彩の声がした。
「実果ちゃん、早いよ…」
「あー、ごめん」
「陸上部だったの?」
軽く走りながら向かっていると、彩が聞いてきた。
うん。
その質問、よくされる。
「あたしテニス部だよ」
あたしがそう言うと、彩は驚いた表情に変わった。
「陸部並みだねっ!テニス部なめちゃだめだねー」
あははっ、と笑う彩。
え、そこ笑うところ?
「まぁ、陸部かテニス部かどうかも見抜けないなんて、ダメだなぁ。あたしってば」
「え?どういう…」
「あとで話すねっ!よし、行くぞっ」
蒼花かだんだん見えてきた。
出来たばっかりかな、ってほどに綺麗な校舎だ。