穏やかな春の朝…

8時を回ったかぐらいの時間に、あたしは気持ちよく目覚めた。

美並 実果(ミナミ ミカ)

名前に『み』が多いね、と言われ続けてから約10年…。

あたしは今日、高校に入学する。

窓の空には入学式にぴったりの青い空が広がる。

空から目を離し、壁に掛けてある制服を見つめた。

ずっとずっと、あたしが行きたかった高校。

『蒼花高校』

3年生になって、あたしは先生から「今のままじゃ、危険だよ」と言われ、必死に勉強をした。

遊びも何も我慢して。

あたしは蒼花に行きたかったから、行かなきゃいけなかったから…。

その結果、蒼花に行けることになった。

仲いい友達とは、誰1人として同じじゃなかったけど…。

それでもいいから、蒼花に行きたかった。

「実果!」

「はーい!」

1階からお母さんの声が聞こえて、あたしは急いで階段を降りた。

「何?」

リビングのドアを開けて、お母さんに尋ねた。

「式の時間、何時からだっけ?」

これだから年は……。

とは思いつつも、言葉に出すのはやめた。

「11時だよ…」

呆れながら言うとお母さんは、「そっか!」と、納得した。

「あ……」

険しい顔をしながら、声を漏らした。