でも小さい時だ
記憶はまったくないのは仕方ない

「ふふっ」

「な、なに?」

不意に笑う灯

「まさか二人が大きくなってからまた出会うなんて思わなくてね。まあ、親も親だから…かしら?」

「……親、ね」

「奏は昔からまったく両親のこと聞いてこないけど知りたいと思わないの?」

「……」

その言葉に黙る
奏はまったく両親のことを覚えていない
話に聞いてたのは「母は体が弱くて病気で亡くなり父は仕事中に亡くなった」というだけだ

どんな人で何をしていた人かなんて一切聞かなかった

「いまは良いんです。あたしにはやるべき事があるのでそれが終わったら聞かせてください」

「そうね…。その時が来たら話すわ。いまはそんな話をしに来たんじゃないのよね」

灯は何となくわかっていた
奏が何しにここに来たか

懐かしい話をしに来たわけではなく今なにが起きていて今後どうなるかを…

「……黒羽が再び動き出すの」

「そう…また」

またあの悲劇が起きるのか、と感じた
10年前の異能者実験と同じ悲劇が再びやってくるのかと

いくら四つ葉園が保護下の元にあっても子供たちが被害に遭わないとは限らない

それを少しでも防ぐために奏はやってきた