白い扉を特別なコードで開けると、ベッドには一人の少女がいた。

『五月二十八日。自宅を放火。両親とその友人二名を焼死させる。』

プログラムと顔が一致するのを確認すると、僕は扉を閉め、立った。
少女はこちらを見つめ、話しかけてきた。

「あんたが看守ロボット?」
「そうです。」
「ふーん、、名前は?」
「ありません。」
「見分けつかないじゃない。」
「私はあなたを認識できます。製造番号なら明記されています。」

少女は私の首のあたりにある番号を読み、
「長すぎ」
と言った。

僕は黙った。
囚人とは必要最低限の話しかしない。
そういうプログラムだ。

少女はにやりと笑うと
「名前あげようか?」
と言った。
「私、木田紀子。私のロボットなんだから名前つけてもいいでしょ?」

僕はしばらくプログラムを検索し、
「許可します。」
と言った。


少女はしばらく考えて、
「シン。シンって名前にする。」
そう言うなり、僕に近づくと手を差しだし
「よろしくね、シン。」
とほほえんだ。

僕には意味がわからなかった。
けれど質問はしなかった。
そういうプログラムだ。

少女は肩をすくめると、僕の右手を握り、振った。

「ほら、こうするの。よろしくねってこと。さようならは左手でするのよ、シン。」
と言った。


シン。

僕の名前。
ただ、識別をするためではなく、特別な意味を持つもの。

僕はその日から特別なロボットになった。