とりあえずソファにダイブしたいな、なんて考えていると、閉まりかけていたドアが勢いよく開く。
驚いて振り返ると、慌てた正紀がそこにいて、
「な、なにあんた!」
驚いて声がひっくり返る。
それを恥ずかしいと思う前に正紀があたしの両肩を掴んで血相変えて言ってきた。
「俺は、俺は!…」
そして、勝手に顔を赤く染めてそれを隠すように俯く。
なんとなく、言いたいことは分かる。
「咲奈のこと、いいやつだと思うし。いい友達だと思ってる。でも…でも、」
最近の正紀はやたら、こればかり。
似たような言葉を必死な顔で伝えてくる。
「やっぱり、お前が特別だ。ちっせーときから一緒だし、幼なじみだし、それに…」
それに…のその先を、
「いや、なんでもねぇ…」
彼はいつも飲み込んで、吐き出そうとはしない。
でも、あたしはその続きを知っている。
知っているけど、けど。
「なによ、もう。最近そればっかじゃん。わかってるわよ、あたしもあんたは特別。勿論咲奈もだけどね、あたしは」
そう笑って誤魔化した。
これしか、あたしには術がない。