あたしは口を手で抑え、漏れそうになった声を必死で飲み込んだ。
嘘だ。
そんな、馬鹿な。
有り得ない。こんなオチ。
「莉子が、好き…?」
咲奈の上擦った声が鼓膜を揺らす。
上手く息が出来ない。
視界が揺れて、汚い涙が頬を這う。
「莉子が…」
もう一度確かめるように咲奈はその名前を口にする。
あたしの、名前を。
「あぁ、だから…ごめん」
あたしは堅く瞳を閉じて、
耳を塞いだ。
咲奈の泣き顔も、
咲奈の泣き声も、
見たくない。
聞きたくない。
それはあたしを責めるものだから。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…