あたしは口を手で抑え、漏れそうになった声を必死で飲み込んだ。

嘘だ。

そんな、馬鹿な。

有り得ない。こんなオチ。


「莉子が、好き…?」


咲奈の上擦った声が鼓膜を揺らす。
上手く息が出来ない。
視界が揺れて、汚い涙が頬を這う。


「莉子が…」


もう一度確かめるように咲奈はその名前を口にする。


あたしの、名前を。






「あぁ、だから…ごめん」



あたしは堅く瞳を閉じて、
耳を塞いだ。

咲奈の泣き顔も、
咲奈の泣き声も、
見たくない。
聞きたくない。


それはあたしを責めるものだから。