あたしは酷い奴だ。
結局こうやって、誰かに守られて、
ここに居る。

ほら、今だって、



「そんな顔すんな」


正紀の腕の中。


「辛そうな顔すんな」


好きじゃないくせに。
ちゃんと想ってあげられないくせに。

傘に隠れて、抱き付いた。
雨音に紛れて、泣いてみた。


「壊れちゃった…」


咲奈を想いながら、あたしを想ってくれる人の腕の中で、あたしは泣いた。


「もう全部全部…」


本当になんて酷い奴なんだ。


「壊れちゃったよ……」



正紀は優しい奴だから、
弱ったあたしをほっとけないって、
分かってたくせに。

分かってたからこそ。



あたしは……