どうして、本当は泣きたいくせに、笑うの?


「正紀を幸せに出来るのは、莉子だけだから、さ」


どうして、笑うくせに、苦しそうなの?
どうして、そんなに正紀のことが好きなの?

あたしの気持ちはどうなるの?


「そんなの嫌だ……」


あたしは咲奈の頭を引き寄せて、目を瞑る。
瞬間、ビクッと咲奈の震動が伝わって来て。
そして、唇から熱が伝わってくる。

でも、咄嗟に体を突き放された。

拒絶。絶望。
そんな言葉が頭にこびり付く中、キスした後のほんのり赤く染まる咲奈の顔に興奮してる自分も居た。

こんな顔、正紀もきっと見たことないだろう。

そう思ったら、余計愛おしくなった。

愛おしくて、愛おしくて…
あたしの収まり切らなくなった感情が、
待ってましたと言わんばかりに溢れ出す。


「莉子?ちょっと、突然…」

「好き」


咲奈は困ったように笑顔を作って、え?って首を傾げる。何言ってんの?って、そう言ってるみたいに。