息が、上手く出来なくて。
涙が、バカみたいに墜ちていく。
体が、別の物みたいに勝手に震えて。
「……嘘」
自分の声すら誰のものか分からない。
「だから、必死だった」
苦しそうに顔を歪めて、彼は言った。
「咲奈より勝てるものを、探してた」
正紀の口からよく出ていた言葉を思い出す。
あれだ。
…幼なじみ。
「でも、勝てるものなんて時間くらいだった」
そう言った彼は悔しさが滲む顔を隠すように前髪を触りながら続けた。
「時間だけじゃダメだった」
他にも探していた。
咲奈に勝てる何かを。
でも、越えられないものがある。
咲奈には正紀じゃ越えられないものが、ある。
「なんで、女、なんだよ」
「………っ」
「性別なんて、どうにも出来ないだろ…」