好きだ、って口に出せたらどんなに楽だろう。


「本当?あんま無理しないでよ?じゃ、そろそろ席戻るね」


ひらひらっと手を振るその手を掴んで、
行かないで、なんて口に出せたら…

側にいて、なんて口に出せたら…


「…咲奈」

「ん?」


席に向かっていた咲奈が可愛い顔で振り返る。
ほら、もう本当助からないよ。
あたしの病気、こんなに酷くなってる。

今すぐ抱き締めたいくらい。


「…ごめん、なんでもない」


でも、結局何も言えないし、出来ない。
それが、余計にあたしを苦しめる。
あたしの病気の進行を早める。


「え?なによ、もう」


咲奈は困ったように、呆れたように、笑った。
仕方ないな、ってそう言ってるみたいに、
優しすぎる、花みたいなその笑顔で。

あたしは、きっと、そのうち死ぬだろ。

きっと、彼女に殺される。

でも、それを望んでいるのかも、しれない。