あれからあたしと正紀は、口を聞かなくなった。
ただ、目が合えば気まずくて逸らす。
その繰り返しが続いて数日が経ち、
それまで何も言ってこなかった咲奈も、痺れを切らしてか、心配してか、眉間に皺を寄せながら口を開く。
「正紀と、なんかあった?」
「なんか、ってゆーか…」
ここで流石に、告られた、とは言いにくくて言葉を濁した。
「告られた?」
でも、その言葉は簡単に言われてしまい、あたしは、俯きながら静かに頷いて見せる。
「何あたしに気遣ってんのよ!正紀が莉子のこと好きなのは知ってた事なんだから、別に隠さなくたっていいのに」
「いや…でも…」
でも、その笑顔の裏に、涙が隠れてるように見えるから。
「お願い、咲奈」
涙が隠れてるから。
「泣かないで」