口だけの親友。
形だけの、友情。
「正紀、あのね…」
二人から少し離れた場所に身を隠し、
鈴の鳴ったようなその声に耳を傾ける。
本当は立ち会いなんてしたくなかった。
でも、あんな顔で。
あんな熱を帯びた、可愛い顔で。
お願い、着いて来て。
なんて言われたら、誰だってしっぽ振って喜ぶよ。
少なくても、あたしは。
「ずっと、好き…だったの」
でも、やっぱり来なきゃよかった。
こんなに痛いなら。
こんなに泣きたくなるくらいなら。
ちゃんと断れば、
よかったよ。
体の内に秘めた想いは。
形に出来ない愛情は。
ぱんぱんに膨れ上がり、
破裂するその時を、
ぐつぐつ音を立てながら、
待っている。