「あながちあの見解は一般論で正解だろ。しかも、お前だってそう思ってるんじゃないのか。」

 その男性は、にやりと怪しく口許を緩めて彼をからかっているようだ。彼は頬を赤く染めている。

「あらあ。図星ですか。意外と男の子だねえ。」
「煩いですよ。そんな…。本人の前でそんなこと。」
「大丈夫です。私も貴方のこと好きですよ。」
『え…。』
「いつも、本当に一緒にいて優しくしてくれる。それだけでも、嬉しいんです。」

 だから、この人が好き。兔とかハムスターとかも可愛いものは好きだった。でも、人間はどうしても好きにはなれなかったのだが、この人はまた別な気がした。だから、人間を好きなったことは初めてなのだ。そのことを伝えたいのだが、あまり上手く伝わってい ないような気もした。私は、少々首をひねる。そして、

「私は、あまり人間を信じれなかったんです。今は、この人は信じられるって人が出来ました。」
「これって…。恋愛対象外…。友達って感覚ですよね。」
「まあ、まだ頑張れるだろ。とらえ方によると彼女は人間と言うものをお前しかしらないんだ。」

何やら二人で私に話を聞かれたくないのか小さい声で話をしていた。私は、更に分からなくて眉をひそめると、男の人が彼を押しのけてきた。

「それで、お嬢さんはその格好で一人できたのかい。」
「え。はい。」

 そりゃ、外に出るにはあまり宜しくない格好だったのかもしれない。何せ部屋着だ。パーカーにロングスカート。それに防寒着とマフラーに手袋というあまり可愛くない格好だった。その上、私は長い髪の毛を無造作に結んでいるだけだ。もうちょっと小奇麗にしたほうがよかったのだろうか。それでも、今日は妙に彼に会いたくなったのだ。それが理由では元も子もないが正直に言って私自身が単純に見えて仕方ない。いや、ただ単に単純なのだろう。単純だからこそ出来たのだろう。そんな、私が妙に恥ずかしくなってくる。

「あの、あまりにもみすぼらしい格好ですし…。やはり少々小奇麗にしてきた方が良かったでしょうか。」

 私がおずおずと尋ねると、

「え。それ以上綺麗にしたらコイツが黙っていないでしょ。」

 と男性は答えた。私にとってはどういうことなのだろうかと正直に思っていた。首を傾げると、彼は無造作に頭を引っ掻き、乱暴に口を開いた。

「とりあえず、此処でいい加減立ち話も寒いだけだから店に入りましょう。彼女も制服じゃないですから歳を誤魔化せばなんとかなるでしょう。」
「それも、そうだな。おいで。」