「あの。ごめんなさい。お金…。」

 私は、やっとのことで発したことは先程から引きずっている御代のことだった。そんな私を知ってか知らないかは分からないけど、空さんは苦笑して私の頭を撫でた。優しく、優しく、まるで壊れ物を扱うかのように。そんなに大切な扱いをされたことなかった私はどうしてか、彼を見上げていた。

「そんなこと、どうでもいいよ。俺はどちらかというと君が来てくれたことが嬉しいんだから。まさか、こんな時間までひっぱってしまったことには後悔しているけど。」
「いえ。その、家にいてもどうせすることがないですし。私的には貴方といた方が気持ちが落ち着いたって言うか。私が貴方に会いたかったって言うか。ただそれだけなんです。貴方が、私をここまで大切に扱ってくれるのがどうしても嬉しくて、まるで私を人間の様に扱ってくれて本当に嬉しいんです。」

 そう言った時の彼の表情はどこか悲しそうで、まるで私の代わりに怒ってくれているようでどこか胸を締め付けさせられた。繋いでいた手を引かれバランスを崩したと思ったら、彼の胸に思い切り飛び込んでいてどうしたらいいのか分からずただ放心状態へとなっていた。どうして、彼は私にこんなに優しくしてくれるのだろうか。それは、出会ってからずっと考えていたことで、それでも見つけることが出来ない答えだった。ただ、分かっていたことはこれがとても温かいものだってことくらい。彼が本当に温かい存在ってことくらい。だから、傍にいてとても落ち着くし、傍にいてこんなにも傷つかない。むしろ、包み込んで和らいでいく。そんな存在を何というのでしょう。私にはわからないけど、この人は大切なのだと、特別なのだと分かる気がする。私の背中にある彼の大きな両手。それと同じように私も彼の背中に手を回した。彼の背中は大きいし広いしで完全に回すことが出来なかったけど、やっぱり温かいってことは分かった。

「当たり前じゃないか。君は人間だ。そして、女の子だ。俺は、君の過去を知らないし現状だって知らない。けど、俺の何気ないひとつひとつに君が助かってるって知ってどこか嬉しいって思える。変だよな。俺らお互い知らなかったのに。」

 彼の声がダイレクトに聞こえる。聞こえては私の耳を優しく刺激してくれた。どこか心地好い声音は相変わらずで、私を安心させてくれる。それが、ただ嬉しかったし、幸せだなって思った。

 私は、そっと彼から離れると口角をあげて笑んでみた。どうやら、最初に相当笑ったから筋肉は柔らかくなっていたらしい、すんなりと笑むことが出来た。

「今日は、遅くまで迷惑をかけました。一緒にいられて嬉しかったです。」

 そう、告げると、私は彼に背中を向けた。帰ろうとした一歩を踏み出した時だった。肩を彼に掴まれたのです。驚いて振り返ると、

「まさか、今から一人で帰ろうとしていない。駄目。ダメダメダメダメ。送るから案内して。」

 そう言って、私の手を力強く握った。

「え、ですが、遅いですし。」