代わりに、喉がものすごく乾いていたのは確かだった。私は、店長さんに向かって、

「お水は、貰えますか。」

 と尋ねると、満面の笑みでグラスに冷たい水をくれた。それを、一気に飲み干すと、乾いていた喉は潤され更に、疲れも一気になくなった。ほっと、一息の着いた私は、コップを置いて、彼の横で彼が焼き鳥を頬張ってるのを眺めていた。

「君は食べなくていいの。」
「走ってくる前に食べてきたんです。あまりお腹は空いていないのですが、喉は乾いているので、飲み物は頼んでもいいでしょうか。」
「でも、さっき水を飲んでたよね。」
「足りませんよ。」
「わかった。店長。」

 彼が、私のぶんのオレンジジュースを頼んでくれると、店長は大きめのグラスにそれを持ってきてくれた。私は、頭を下げながらそれを受け取ると、ちょびちょびと口に含み始めた。甘みと酸味と絶妙なそれは、美味しいと純粋に思えるものだった。一人じゃない夜と言うのは初めてではないが、あまりにも久しぶりすぎてどこか心が浮いているような。そんな、私が大きくなってから感じることがなくなった想いだった。それは、とても心地好くて私の中では精一杯の何かだった。

 結局、私はあまり彼らの会話に参加することは出来なかった。話しをしている内容の殆どが仕事の内容だったから、という理由ももちろんある。でも、もうひとつ私が此処にいたいからいて、そしてそれを彼らは許してくれている。それだけで十分だし私は彼らの邪魔をしたくないっていうりゆうが勿論なった。気が付いたら、時刻はすでに22時を過ぎていた。それくらいの頃に彼らは席を立った。それに合わせるかのように私も慌てて席を立った。彼らは帰る頃だったのだろう。私もその後ろについてくるようにそのお店の会計のところまで来たところで気がついた。財布を持ってきていないと。

「あ、あの。私。」

 私は、慌てて言葉を発すると空さんんは私の頭をひと撫でして口角を上げた。そして、
「おごらせて。」

 と言って、自分の財布から私の分までも入った金額を出した。私は、申し訳ない気持ちで一杯で何をずっと下を向いていた。すると、彼に手をひかれた。急に熱に包まれたそこは、どうしてか体までもがあったかくさせてくれた。彼に連れられてお店の外に出ると、肌に突き刺すような冬の風が私の頬を撫でた。それでも、手だけは温かくてずっと繋いでいたいって錯覚してしまうほどで、どうしてか離れたくなかった。彼が先輩と呼んでいた人は駅で帰るから、と言うことで私たちと別れて行った。私たちは、ただその先輩の背中を見送ったあとお互い動き出すことなくたたずんでいた。