彼の抱える過去のトラウマに、私の胸が締め付けられる。

想像しただけでも辛いと思うのに、体験したリクの心はどれ程深く傷ついてしまったのだろう。

何か声をかけたくて。

だけど、言葉にするには難しくて。

リクに対する思いを巡らせていたら……


彼の眼差しがふと柔らかくなって、私を視界に捉えて。


「でも、やっぱりオレには小春が必要なんだ」


リクの言葉に、トクントクンと私の心臓が速度を早めていく。


「その事を、後夜祭ん時にすんげー実感してさ」


思い馳せるようにリクが微笑んだ。


「オレなりに、頑張ってみるって言ったろ? だから……まずは小春に、ちゃんと伝えようと思って。その為の小道具を、用意してました」

「小道具?」

「──コレ」


言って、リクはブローチをベッドのサイドテーブルに置くと、パイプ椅子にある自分のショルダーバッグから小箱を取り出した。