リクが以前言っていた。


『小春は、小春が大切だと思うやつと一緒にいればいいってね』


あの時は、突き放すようなものに聞こえたけど……

今なら、なんとなくわかる。


大切な人には、幸せになってほしい。

約束に縛られる事はないのだ。


忘れてしまってはいたけど、今日まで私は幼なじみとしてリクと一緒にいた。

ある意味、約束を守っていたことになる。

でも、私の中にリクへの想いがある以上は、百瀬さんには邪魔なものになるだろう。


私は、ゆっくりと上半身を起こすと、リクに笑いかけた。


「これからは、リクの見つけた本当に大切な人と、ずっと一緒にいてね」


ずっと一緒にいるべきは、もう、私では──


「それ、お前の誤解」


……誤解？


「え？」

「小春はさ、オレが百瀬と付き合ってるとか、そんな事思ってるだろ？」

「思って、ます」


何故か敬語になってしまった私に、リクが「やっぱりか」と溜息を吐いた。