「──リクが」

「ん?」

「リクが約束の男の子?」


問いかけた私に、リクはただ静かに微笑む。

そして……

彼は、ジーンズのポケットから何かを取り出し手を広げた。

そこにあるのは、私の意識が途絶える前に見た、桜のブローチ。

昔、私がリクにあげたもの。


「前に、大切な物は家にあるって話し、しただろ? それが、コレ」


リクの言葉に体育祭の借り物競争での話しを思い出し、私は「そうだったんだ……」と答えた。

今でも大切に持っていてくれたことが素直に嬉しい。

──だけど。


"物"は変わらなくても、"者"は変わってしまった現実が、こんなにも悲しい。


リクの幸せを心から喜ぶには、まだ時間がかかりそうだけど。

それでも、リクが前を向くなら応援したいという気持ちは確かにある。


「……ね、リク。勝手な約束をしてごめんね」