「ここにいたの。そろそろ行かないと」


大人の女の人が少年に声をかけた。

少年の柔らかそうな髪が風に揺れる。

やがて、少年はゆっくりと立ち上がると、手に乗ったブローチをポケットの中にいれた。


「……ありがとう、こはるちゃん」


少し掠れてしまった声でお礼を言った少年は女の人のところへ向かう。


……その、間際。


少年が、振り向いた。


泣いていたせいで赤くなってしまった目で私を見つめて。



「ぼく、りくと」