「なんか……」

いきなり瑠衣がクスクスと笑い出した。

「先生、捨て猫みたい」

「何それ」


意味がわからなくて、わたしは彼を下からにらんだ。


「だって、小っちゃい体がずぶ濡れで、震えてて」

「要するに貧相って言いたいん?」

「ううん。守ってあげたくなるってこと」


耳たぶが、熱くなった。


やさしく微笑む瑠衣のまつげを、雨の雫が飾っている。


「何、言ってんの…っ? 年下のくせに生意気なんやから」

「先生こそ、年上のくせに可愛い」


大きな手が、わたしの頭を撫でた。

驚いて身をすくめると、瑠衣は首を振って言った。


「そんな警戒せんといてくださいよ」

「別に、警戒してるわけじゃ……」