ミキ姉はやんわりとした口調で、なかなか痛いところを突いてくる。


指摘された通り、わたしはずいぶん長い間、実家に顔を見せていなかった。


『葵がなかなか帰ってこないって、お父さん、寂しそうに言ってたよ。
すぐ近くに住んでるんだからたまには会いにいってあげればいいのに』


「うん。わかってるってば」


きつい口調で言い返すと、ミキ姉のため息が電話の向こうで響いた。


こんなやり取りをするのは、もう何度目だろう。


長女は結婚して九州に引越し、次女であるミキ姉は東京で就職。

そして末っ子のわたしだけが地元の大阪で暮らしているというのに、まったく実家に寄り付かないことを、ミキ姉は心配しているらしかった。


『とにかく、気が向いたら葵も来てね。
実はわたしの彼氏も連れて行こうと思ってるから』

「ミキ姉、彼氏できたんや」

『うん。めっちゃいい人やで』


おそらく無意識に出た関西弁が、ミキ姉の素直な気持ちを物語っていた。


『じゃあ、そろそろ葵のお仕事の時間だと思うし、切るね』

「うん、ありがとう。ばいばい」

『ばいばい』