「ん? ああ、ほんまやな」

「瑠衣が携帯に気づけへんとか、めずらしいやん」


……めずらしい? 

どういう意味だろう。


わたしはドアの影に隠れ、その会話に耳をすます。


「たしかに最近の瑠衣、やたら携帯ばっかり気にしてたよなあ」


栗島くんにも指摘された瑠衣は、


「んー? そうか?」

と適当な言葉で濁そうとする。


「何やねん、怪しいなあ。正直に白状しろって!」


しびれを切らしたように栗島くんが言った、その後だった。


瑠衣は胸の中にあるものをゆっくり音にするように、つぶやいた。



「待ってるねん。……大事な人からの電話」


「――…」



その言葉は、熱い風になってわたしの胸を走り抜けた。


心が火傷したようにひりひりと痛みだし、わたしは動けなくなった。