「えっ。いいよ、申し訳ないし」

「全然申し訳なくないし」

下から見上げてくる瑠衣の笑顔は、普段見慣れていない分なんだか不思議な感じがする。


胸のざわめきが、ますます強くなる。


「でも……」

「大丈夫ですって。ホンマについでやし」


ほとんど押し切られる形で、わたしは「じゃあ、ホットコーヒー」とボソッと言った。


「飲み物だけ? おなか空いてないんですか?」


うん、とうなずくわたし。

瑠衣は財布をポケットに入れて立ち上がった。


「優しいやん、瑠衣。じゃあついでに俺のも……」

「お前は自分で行けって」


栗島くんの頭をはたき、瑠衣はレジの方に歩いていく。


「おいっ、先生に対する態度とまったく違うやんけ」


瑠衣の後を追いかける栗島くんの声が店内に響いた。


騒がしい彼らの様子を見て、まわりのお客さん――特に若い女の客たちがクスクス笑っている。


「なんか、アホな男共ですみません」


残された涼子ちゃんが苦笑いして言った。