突然、立ち止まって言う栗島くん。


「俺ら、予備校の帰りはいつもここで晩メシ食ってるんですよ。
よかったら先生も一緒に。ねっ」


そう言って彼は、わたしたちが立っている場所の目の前にあるファーストフード店を指差した。


“ここ”……っていうのは、つまりこのお店だろう。

じゃあ、“俺ら”は? 


複数形に含まれるであろう人を思い浮かべ、身構えた。


「あ、いや、でも邪魔しちゃ悪いから」

「とんでもないっすよ! むしろ先生が来てくれたら絶対あいつら喜ぶし」

「えっ、ちょっと待ってよ」


手招きしながらさっさと店に入っていく栗島くんに、わたしは焦った。


さっき助けてもらったという負い目もあり、きっぱり断れない自分が恨めしい。
 


しかたなく後を追って入ると、

やはりと言うべきか、奥の席に瑠衣の姿があった。