――11ケタの数字がなぜか頭から離れない。


あれは、どういうつもりだったんだろう。


ちょっとセンセイをからかっただけのこと? 

それとも若い男の子にありがちな、年上に対する憧れ? 


無意識にいろんな可能性を並べては、そんな自分に苦笑した。


瑠衣は今まで通り普通に登校し、授業を受けたり、友達と楽しそうにおしゃべりしていたりする。

それを見て心のどこかでホッとしているわたし。


なるべくなら職場では平穏に過ごしたい。

むやみに乱されたくはない。


けれど、そうもいかない時だってあるんだ。


たとえば、一方的に関係を切った元不倫相手に責めたてられる、とか。




「……葵!」


授業が終わって人気のなくなった廊下で、山崎はわたしの腕をつかまえてにらんだ。


いつの間にわたしを下の名前で呼ぶようになったんだろう、

なんて冷静に考えながら、わたしはその手をふり払った。