そんなわたしたちの関係は、瑠衣が初めて職員室まで来たことで変化した。


前に約束した通り、彼は授業でわからない部分を質問しに来た……はずだった。



「先生に教えてほしいとこ、まとめてきました」


わたしの机の上に大学ノートを広げ、瑠衣は言った。


「どこ?」

「ここです」


わたしは瑠衣のノートに目を落とした。

整然と文字が並び、要点がよくまとめられていた。


「ああ、これはね」


文字を指先で追いながら、ポイントが理解できるように説明する。

わたしのとなりに立っている彼は、相づちを打ち真剣に聞いていた。


「やっぱり先生の説明はわかりやすいです」

「そう? よかった」

「あ、あともう一ヶ所いいっすか? 次のページなんやけど」


その言葉にうながされ、ページを開く。


わたしの指が、一瞬止まった。



“090-XXXX-XXXX”



「……」


右下にさりげなく書かれた11ケタの数字に、目が吸い寄せられた。


ノートを埋めつくすアルファベットの中で、それは明らかに不自然だった。