「俺は今度こそホンマに、水野のそばで支えられる自信があるよ。
俺にはもう娘がおるから、新しい子供は望まへん。水野がむりにトラウマを克服せんでも、一緒にいられるんやで?」
 

何かを失った者同士だからこそ、見える未来がある。
 

それはきっと、今の瑠衣とは見ることができない、おだやかな未来のカタチ。


「だから、な?」


涙で濡れたわたしの顔をぬぐいながら、卓巳が言う。


「俺だったらこんな風にお前を泣かせへんから」

「違うよ」


卓巳の眉が動いた。


「わたしは……瑠衣のせいで泣いてるんじゃないねん」


その言葉に偽りはなかった。


涙は瑠衣のせいじゃない。

瑠衣はきっと、わたしを傷つけたくて力でねじふせたわけじゃない。

わたし以上に、きっと瑠衣の方が痛かったはずだ。
 

彼にそんな想いをさせてしまったこと。

それでも彼を受け入れられなかったこと。


自分が許せなくて、涙が止まらなかった。