「……水野?」
卓巳の顔が青ざめて、みるみるこわばっていく。
それを見て、今の自分がいかに異様な姿なのかやっと自覚した。
涙で汚れた顔。
はだけた服を直すこともせず、板張りの廊下にへたりこんでいたわたしに、卓巳は駆け寄った。
怒ったような声で「くそっ!」と吐き捨てる卓巳の顔は、けれどなぜか泣きそうだ。
あらわになった太ももを隠すように、上着をかけてくれた。
「……彼氏か?」
はりつめた声で尋ねられた。
「お前にこんなことしたんは、彼氏か!?」
語尾が荒々しくなっている。
卓巳は自分を落ち着かせるように深く息をはいた。
手にはうちの鍵が握られていた。
わざわざ届けてくれたんだ。
けど、今回はさすがに、タイミング悪いよ……。
「水野。俺んとこ来いよ」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
脳だけが深い海の底に沈んだみたいに、重く湿っていた。
「俺の方が絶対に幸せにできるから」
寸分の迷いもない瞳に見据えられ、やっと理解する。
呆然として身じろぎもせずにいると、卓巳は視線を合わせたまま言葉を続けた。
「今の彼氏とうまくいくわけないねん。高校時代の俺と同じ状況なんやから。
水野を支えたいっていう気持ちだけは余るほどあるのに、実際は何もできへん。自分の無力さにイライラして、絶望して」
「……」
「お互いがお互いを傷つける関係やねんて」
その言葉に、麻痺していた心が悲鳴をあげた。
だけど卓巳はしゃべるのを止めない。
卓巳の顔が青ざめて、みるみるこわばっていく。
それを見て、今の自分がいかに異様な姿なのかやっと自覚した。
涙で汚れた顔。
はだけた服を直すこともせず、板張りの廊下にへたりこんでいたわたしに、卓巳は駆け寄った。
怒ったような声で「くそっ!」と吐き捨てる卓巳の顔は、けれどなぜか泣きそうだ。
あらわになった太ももを隠すように、上着をかけてくれた。
「……彼氏か?」
はりつめた声で尋ねられた。
「お前にこんなことしたんは、彼氏か!?」
語尾が荒々しくなっている。
卓巳は自分を落ち着かせるように深く息をはいた。
手にはうちの鍵が握られていた。
わざわざ届けてくれたんだ。
けど、今回はさすがに、タイミング悪いよ……。
「水野。俺んとこ来いよ」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
脳だけが深い海の底に沈んだみたいに、重く湿っていた。
「俺の方が絶対に幸せにできるから」
寸分の迷いもない瞳に見据えられ、やっと理解する。
呆然として身じろぎもせずにいると、卓巳は視線を合わせたまま言葉を続けた。
「今の彼氏とうまくいくわけないねん。高校時代の俺と同じ状況なんやから。
水野を支えたいっていう気持ちだけは余るほどあるのに、実際は何もできへん。自分の無力さにイライラして、絶望して」
「……」
「お互いがお互いを傷つける関係やねんて」
その言葉に、麻痺していた心が悲鳴をあげた。
だけど卓巳はしゃべるのを止めない。