【先生。今日はいきなり俺が行って、ビックリした? 

実は栗島から先生が辞めること聞いて、今日だけは絶対に行くつもりやってん。


あ、予備校で最近、変な噂が立ってたことも栗島から聞いたで。

でもまあ、そんな奴らは俺がシバいたるから心配すんな。


あと、これだけは言っとく。


今日の最後の授業めっちゃカッコ良かった! 


水野葵先生はいつまでも、俺たちの自慢の先生です!


明日からは講師と生徒じゃなく、ただの男と女として、改めてよろしくな】





その日の夜に瑠衣から届いたメール。


ベッドの中で何度も何度も読み返し、翌朝起きて、また読んだ。



瑠衣……本当にありがとう。


瑠衣はすごいね。

いっつもわたしのことを助けてくれる。

わたしが辛いとき、困っているとき、絶対飛んできてくれたよね。



今日からはもう
先生じゃないわたし。


顔を洗い、服を着替え、

“その場所”に行った。






「いらっしゃいませ」


自動ドアを抜け、奥に進む。


「あの……」


わたしは携帯をぎゅっと握りしめた。


そして、瑠衣からもらったメールをもう一度だけ見て――



「解約を、お願いします」



――携帯ショップのカウンターに座った。