「片瀬くん……どうして」

「この俺が、先生の最後の授業を休むわけないやん」


得意げにそう言って、瑠衣は隣に目配せした。

鼻をかきながら照れくさそうに微笑むのは、栗島くんだ。


「ほら、先生! 早く授業!」


席についた彼らから、催促の声。


だけどわたしはあふれ出る涙のせいで、なかなか授業を始めることができなかった。


「こら~っ! 泣いてたら英語発音できへんやろ~」


からかうように瑠衣が言うと、みんながどっと笑った。



「俺らみんな、水野先生の授業が好きなんやからな!」


……バカ。


そんなこと言ったら、よけい泣けるじゃない。






涙声でさんざんだったけど、わたしは最後の授業を一生懸命やり遂げた。


晴ればれとした気持ちで聞いた、授業終了のチャイム。

あの音を、あの気持ちを、一生忘れずに思い出として大切にしたいと思った。



「水野先生、お疲れ様でした!」


職員室に戻っていくわたしを、瑠衣たちは拍手で送り出してくれた。


すごく照れくさかったけど、本当に嬉しかったんだ……。