瑠衣を好きだと認めた時点で、もう彼の“先生”ではいられなかった。


涼子ちゃんのことが、さらにそれを後押しした。


こんな時期に辞めるのは講師として無責任だとわかっている。


けれど、どうしてもこれ以上は無理。


辞表も出したし、実家の家族にもこないだ話した。


だからもう、決めたことなんだ。


「ちょ、ちょっと待ってよ先生」


栗島くんは目をパチパチさせる。


「やめるって、瑠衣には話したんですか?」

「どうして?」

「だって……あいつが先生を好きなことくらい、見てればわかるし」


そうなんだ。
わたしは少し驚いた。

男同士の親友って、そんなものなのかな。


だけど、今まで何も言わずに見守ってきてくれた栗島くん。

瑠衣って、いい友達を持ってるなあ……。


「片瀬くんにはまだ話してないよ。どっちにしても彼は今月いっぱい忙しくて来られないしね」


「先生……、退職してからも、瑠衣とは会ってやってくれるんですよね?」


微笑みながらうなずいたわたしを見て、栗島くんの顔に安堵の色が浮かぶ。


「そっか、よかった。まあよく考えてみたらその方が、瑠衣にとってもいいんやろな。
周りの目を気にせずに会えるし」


「うん……」


「でも来月になって瑠衣が登校してきて、先生がいなくなってたらビックリするんちゃうかなあ」


「そうやね」



それで、いいんだよ。


瑠衣のためにも――。