山崎が帰ってしばらくしてから、わたしは身支度を整え部屋を出た。

ひとりでチェックアウトするわたしを風俗嬢だと誤解したのか、駐車場係のおじさんから「お疲れ様」なんて言われ、苦笑いした。



午前0時。

疲れた足で、安っぽいネオンの街を歩く。


春の夜は嫌いだ。

暖かいのか冷たいのかわからない風が、わたしを不安にさせるから。


ついさっきまでわたしは男に抱かれていたのに、それは体の疲労以外、何も現実味を残さなかった。


こんなときは、誰かに電話をしたくなるんだ。


そばにいてもらいたい。


愛してほしいじゃなくて、抱いてほしい――。




バッグの中の携帯電話に、そっと手を伸ばしかけた、

そのときだった。