『大事な話があるから、今年は絶対に帰ってきてね』


新しい年が始まった日の朝。

母からかかってきた電話で言われ、わたしはひどく憂鬱な気持ちになった。


最後に正月を実家で過ごしたのは何年前だろう。

一人暮らしを始めてからは、この時期だけは頑なに避け続けてきたのに。


「叔父さんは?」

さりげなく尋ねると、


『今、お仕事が大変らしくて。年末年始も休みなしやから今年は来られへんって』


母がそう言ったので、1月3日に帰ることを約束した。





地下鉄に揺られている間、気持ちは下り坂だった。

いくら叔父がいないとはいえ、お正月に実家に帰るという不安。


だけどそれ以上に心を曇らせていたのは、クリスマスのあの出来事だ。

気がつけば何度も、あのときの涼子ちゃんの顔を無意識に思い出している。


そのたび瑠衣を好きになったことは間違いなんじゃないかと、不安で気持ちが揺らいだ。



瑠衣からは元旦の0時0分にメールが届いた。


昨年は先生に出会えて最高の年だった、今年もよろしく。

そう書かれたメールに、わたしはどうしても返事ができなかった。